煮干しラーメンといえば、かつては灰色に濁った高粘度のいわゆる「セメント系」が一世を風靡しましたが、「煮干そば 流。」が提供する一杯は、そうした流行とは一線を画す洗練された清湯・微濁仕立てが特徴です。スープの寸胴には、産地や季節によって厳選された数種類の片口鰯や白口鰯などが贅沢に投入され、水出しから火入れの温度管理に至るまでミリ単位の調整が施されています。煮干し特有の生臭さや不快な苦味を徹底的に排除しつつ、旨味と上品な香ばしさだけを力強く抽出した出汁は、最初の一口から最後の一滴まで飲み干したくなる透明感を誇ります。
この極上スープを受け止めるのが、店内の製麺スペースで打たれる自家製手打ち麺です。国産小麦の風味をしっかりと引き出した多加水仕様の平打ち太麺に、職人が一杯ずつ手もみで絶妙な縮れと不規則なウェーブを加えています。茹で上がった麺は、口に含むと驚くほどシルキーでみずみずしく、噛みしめるとモチモチとした力強い弾力が広がります。手もみ麺特有の不揃いな凹凸がスープをしっかりと持ち上げ、すするごとに煮干しの豊かな香味が鼻腔を抜けていく構成は、まさに計算し尽くされた職人技の結晶です。
店主は名門店での修行経験と確かな技術論を持ち、一杯の丼の中に「煮干しの旨味」「小麦の甘み」「タレのキレ」「油のコク」を黄金比率で調和させています。この細部への妥協なき追求こそが、流行り廃りの激しい東京のラーメン界で同店が揺るぎない評価を保ち続けている最大の理由です。