胃を通過した食物は小腸を経て大腸へと送られ、水分を吸収されながら便を形成する。一般に口にしたものが体外へ排出されるまでの時間は24時間から72時間程度とされ、消化機能や腸内細菌叢のバランス、日頃の運動量によって個体差が大きい。つまり、検査前日にいくら絶食に近い生活を送ったところで、3日前に口にした消化の悪い食材が依然として盲腸や上行結腸に留まっている可能性は極めて高い。
日本消化器内視鏡学会の指導施設でも、前処置の質が内視鏡診断の精度を直接左右することが幾度となく指摘されてきた。腸壁のヒダの間に残ったわずかな食物残渣は、小さな病変を覆い隠す格好のブラインドスポットとなる。特に平坦型や陥凹型の病変は、薄い残渣の膜一枚で視界から消え去ってしまう。精密な観察を行うための土台作りは、まさに3日前からのカウントダウンにかかっている。