手軽なプチ整形として語られがちな唇フィラーですが、医療行為である以上、明確な合併症や失敗リスクが存在します。後悔しないために知っておくべき唇フィラー失敗例と回避法の核心を解説します。
最大の失敗例の一つが「アヒル口・ナメクジ唇(Overfilled Lip Syndrome)」と呼ばれる過剰注入です。一度に1cc以上の大量注入を行ったり、頻繁に追加注入を繰り返したりすることで、ヒアルロン酸が本来の組織の許容量を超えて皮膚下で横に広がり、鳥のくちばしのように前方へ突き出してしまう現象です。これを回避するためには、「1回の施術では0.5〜0.8cc程度に留め、1ヶ月後に足りない箇所を微調整する」という段階的アプローチが鉄則です。
また、製剤を浅すぎる層に注入した際に青白く透けて見えたりしこり化したりする「チンダル現象」、そして最も重篤な医療事故である「血管塞栓(上唇動脈・下唇動脈への誤注入による血流不全・皮膚壊死)」があります。血管塞栓は発生から数時間〜24時間以内の迅速な診断と処置が運命を分けるため、解剖学を熟知した専門医(形成外科専門医や日本美容外科学会認定医など)の手技を受けることが最大の防御策となります。
万が一、仕上がりが著しく非対称になったり、しこりや違和感が残ったりした場合には、ヒアルロン酸を速やかに分解・無害化するヒアルロニダーゼ溶解注射という「リセット手段」が存在します。ヒアルロニダーゼを注入すれば、約24〜48時間以内に注入したヒアルロン酸を体内で水と炭酸ガスに分解し、元の状態に戻すことが可能です。ただし、溶解剤に対するアレルギー反応の有無や、自前のヒアルロン酸も一時的に微量分解される可能性を考慮し、必ず事前の皮内テストと医師の管理下で行う必要があります。