「二の腕を細くしたくて筋トレを始めたのに、以前より腕回りが太くなった気がする」という現象には、生理学的および運動力学的な3つの明確な背景が存在します。
第1に、筋肥大ホルモン(テストステロン)の分泌量の違いです。一般的な女性の血中テストステロン濃度は男性の約10分の1から20分の1程度にとどまり、高重量を限界まで持ち上げるボディビル的な特殊トレーニングを行わない限り、短期間で腕が筋肉でパンパンに肥大することは生理学的に極めて稀です。
第2に、トレーニング初期の一時的な筋浮腫(パンプアップとむくみ)が挙げられます。運動開始から2〜3週間は、筋線維の微細な損傷を修復するために水分が筋組織内に引き込まれます。皮下脂肪がまだ燃焼していない段階で筋組織が水分を含むため、一時的に周囲径が数ミリ増大し「太くなった」と錯覚してしまうのです。
第3に、誤った代償動作によるアウターマッスルの過剰関与です。本来効かせたい上腕三頭筋ではなく、肩をすくめることで僧帽筋や力こぶの上腕二頭筋に過剰な負荷が逃げ、首から肩、腕の付け根にかけてのシルエットががっしりと見えてしまうケースが後を絶ちません。