誕生日ごとに決められた「誕生鮨」をご存知でしょうか。花言葉ならぬ「鮨言葉」の意外すぎる真相や、366日分のネタ一覧、誕生日にまつわる驚きの意味まで、その世界には知れば知るほど引き込まれる仕掛けが満載です。多くの人が「寿司屋の業界団体が仕掛けた販促キャンペーンか、あるいは江戸前の古文書に記された縁起担ぎだろう」と推測しがちですが、実態は大きく異なります。
取材班が水産庁や全国すし商生活衛生同業組合連合会などの公的・業界資料を遡ったところ、公式な記録として誕生鮨を制定した事実は確認できませんでした。誕生鮨の直接的なルーツは、2000年代初頭のインターネット黎明期に立ち上げられた複数の個人サイト(代表例として知られる『すしことば』など)にあります。当時は誕生石や誕生花、血液型占いといったコンテンツを個人がユニークに翻案してWeb上で公開する文化が隆盛を極めていました。その中で、ある制作者が寿司ネタに独自の情緒的な言葉(鮨言葉)を割り当てた一覧表を公開したことが、すべての始まりでした。
興味深いのは、そのサイトが出典や作者の素性を一切明かしていなかった点です。そのため、一部のネットユーザーやオカルト検証ブログの間では「誰が何の目的で作ったのか分からない、奇妙な都市伝説サイト」として語り継がれる事態にまで発展しました。しかし、2020年代以降にInstagramやTikTok、Xといったビジュアル重視のSNSプラットフォームで「誕生日のお祝いに自分の誕生鮨を食べに行く」というトレンドが自然発生し、現在ではギフト情報サイトの『お祝い品.com』や寿司カルチャーを発信する『Osushi Studio』などが体系的に取り上げる一大エンタメへと昇華しました。