多くの観客が気をもんだ「二人の間に恋心はあったのか」という疑問。結論から言えば、マッドハッターとアリスの間には、甘いロマンスを超越した極めて純粋で切実な愛情が存在していたと解釈するのが最も自然です。
作中において、マッドハッターは周囲から「狂っている」と疎まれる孤独な存在であり、アリスもまた19世紀末の抑圧的な現実社会で「枠からはみ出した変わり者」として扱われていました。アンダーランドで再会した二人は、世間から理解されない孤独を共有し、唯一無二の理解者として共鳴します。マッドハッターの瞳に宿る悲哀と、アリスの揺らぐ心を支える彼の献身は、単なる友情と呼ぶにはあまりに深く、かといって世俗的な恋愛劇に落とし込むには純度が高すぎる関係性でした。
ジョニー・デップの繊細な演技プランにも、そのニュアンスが色濃く反映されています。デップはハッターの内面にある傷つきやすさと、アリスに対する狂おしいほどの執着・慈しみを、視線の揺らぎや声のトーンの変化で見事に体現しました。言葉で「好き」と告げずとも、アリスを見つめる表情そのものが、雄弁に特別な感情を物語っていたのです。