「忘れようとすればするほど、記憶の影は濃くなる」——このパラドックスこそが、『100回くらい忘れようとしたけど』が抱く核心である。クリープハイプが描く歌詞の世界では、未練や未完成な感情が一切の美化を経ずに、生のまま提示される。
最新の音楽シーンの文脈で本作を読み解くと、SNS時代のデジタルな人間関係に対する静かなアンチテーゼが見えてくる。ボタン一つで連絡先を消去できる時代にあっても、人間の脳裏に刻まれた感情の傷痕はそう簡単にフォーマットできない。タイトルにもある「100回」という数字は、単なる回数ではなく、諦め切れずにループする葛藤の無限回廊を象徴しているのだ。