近年、この歴史的建造物に新たな命を吹き込んでいるのがロケーションツーリズムの波だ。荘厳さと温かみを併せ持つ独特の空間美は、映像制作者たちの創作意欲を刺激してやまない。
羽海野チカ原作の実写化映画『3月のライオン』(大友啓史監督)では、主人公・桐山零が挑む重厚な対局シーンの舞台として使用され、張り詰めた緊張感と精神の深淵を見事に描き出した。さらに、舘ひろしが主演を務めた映画『終わった人』でも、人生の黄昏と再出発を象徴する重要な場面で登場する。近年ではNHKの大河ドラマ関連特番やドキュメンタリー、さらには世界配信されるNetflixのオリジナル企画に至るまで、映像関係者からのオファーが引きも切らない。
「この屋敷が持つ自然光の入り方と、漆塗りの床が反射する陰影のグラデーションは、CGでは絶対に再現できない」と映像ディレクター陣は口を揃える。光と影が織りなす有機的なリアリティが、物語に揺るぎない説得力を与えているのだ。