虐待の現場を直接目撃したわけではない。それでも連絡してよいのか。この疑問に対する法的な答えは極めて明確だ。児童虐待防止法第6条は、虐待を受けたと思われる児童を発見した者に対し、速やかな通告を国民の法的な義務として定めている。ここで重要なのは「確証」ではなく「疑い(思われる)」の段階で通告が求められている点にある。
厚生労働省から移管され司令塔機能を担うこども家庭庁が示す指針でも、通告は告発や懲罰の手段ではなく、支援が必要な家庭を早期に発見するためのセーフティネットであると位置づけられている。こども家庭庁長官の諮問機関や専門部会でも繰り返し強調されているように、早期介入の遅れが致命的な結果を招くリスクは極めて高い。激しい怒鳴り声や物を投げつける音、不自然なアザ、季節に合わない服装など、日常の中の小さな異常値が通報の正当な起点となる。