画面に「E202(信号を受信できません)」が表示されたとき、多くの人が「テレビ本体が壊れたのではないか」と直感します。しかし、民放が綺麗に映っている場合、チューナーの基板自体が物理的に全損している可能性は極めて低いです。その背後には、地上デジタル放送が利用しているUHF帯の周波数特性が関係しています。
日本の地上デジタル放送は、物理チャンネルと呼ばれる13chから52chまでのUHF周波数帯(470MHz〜710MHz)を各放送局に分割して割り当てています。地域の電波塔(親局・中継局)によって割り振られる周波数は異なり、たとえば東京タワーや東京スカイツリーから送信される広域放送において、NHK総合やEテレと民放各局では使用する周波数帯域の高さに差があります。
屋外のテレビアンテナが強風でわずか数ミリ傾いたり、同軸ケーブルの経年劣化によって信号の減衰が進むと、電波帯域全体が一律に落ちるのではなく、特定の周波数帯だけが急激に減衰する「周波数選択性フェージング」のような現象が発生します。デジタル放送では、信号の品質(C/N比)が一定の受信限界値(閾値)を1デシベルでも下回ると、画面全体がブロックノイズだらけになるか、あるいはE202エラーコードを出して一気にブラックアウトします。民放の電波レベルは辛うじて閾値(多くの受像機で推奨値44〜50以上)を保っている一方、NHKの周波数帯だけが40前後に落ち込んで遮断されている状態こそが、このトラブルの物理的な正体です。