美瑛の風景写真を語る上で、避けて通れないのが観光公害(オーバーツーリズム)と農地保全の対立です。SNSや口コミサイトの投稿を検証すると、「雪の上なら入っても土を踏んでいないから大丈夫」「足跡が少しつくだけ」といった軽はずみな解釈が散見されます。
しかし、これは農業現場において致命的な誤解です。美瑛の美しい丘は、観光用に作られた公園ではなく、農家が生活を営む私有地かつ食料生産の現場です。
冬の雪の下には、翌年の夏に収穫される秋まき小麦などの農作物が静かに越冬しています。人間が雪原に踏み入ると、雪が踏み固められて断熱効果が失われ、地中の作物が凍死する「雪腐病(ゆきぐされびょう)」を引き起こします。また、靴底に付着した見えない細菌や病原菌、害虫が農地に持ち込まれると、作物が全滅し、土壌の入れ替えに数千万円規模の損害が生じるリスクさえあるのです。
地元行政および美瑛町農業協同組合(JAびえい)は、「農地は私有地。靴の跡も残さないで」という強いメッセージを発信し続けています。美しい雪原に見える場所であっても、アスファルトの道路面から一歩たりとも踏み出してはなりません。