「メモを取りなさい」という定型句の指示。一見、理にかなった指導に思えるが、実は当事者にとって最もハードルの高い作業の一つだ。
「相手の話を聞く」「要点を抽出する」「手で書き留める」という3つのプロセスを同時に行う動作は、マルチタスクの最たるもの。話を聞くことに集中すれば書く手が止まり、書くことに必死になれば次に相手が話した内容が完全に抜け落ちる。
さらに、ASDの特性として「曖昧な表現の理解の難しさ」が重なる。「適当に」「いい感じに」「なるべく早く」といった言葉は脳内で具体像を結ばず、何をどこまで覚えればよいのかの基準すらつかめなくなる。記憶力の問題ではなく、受容した言語のコード変換エラーが起きているのだ。