本作や事件を取り巻く情報の中には、ネット上で誤って拡散されている言説も少なくありません。正確な事実を整理しておく必要があります。
まず代表的な誤解が、「清水潔氏が提出したDNA鑑定結果を警察が公式に認めた」という言説です。実際には、警察・検察側は民間で採取された証拠(タバコの吸殻)の採取経路の適法性や証拠能力の担保を理由に、これを公式な再捜査の令状請求の根拠として採用していません。警察庁の立場としては、あくまで「独自の捜査を継続中である」という形式を取り続けています。
また、「足利事件の時効は法改正で撤廃されたのではないか」という疑問も頻出します。2010年に刑事訴訟法が改正され、人を死亡させた罪(殺人罪等)の公訴時効は撤廃されました。しかし、この改正法は「改正法が施行された時点で公訴時効が成立していなかった事件」にのみ遡及適用されます。1990年の足利事件は、2005年5月に当時の15年の時効がすでに完成していたため、法的には菅家さん以外の真犯人を足利事件の容疑で起訴することは二度とできないのです。