奈良公園の鹿は、誰かに飼育されている家畜ではありません。広大な敷地と隣接する春日山原始林一帯で自活している完全な野生動物です。1957年には「奈良の鹿」として国の天然記念物に指定され、文化財保護法のもとで手厚く保護されています。
保護活動の中核を担う一般財団法人「奈良の鹿愛護会」が毎年実施している頭数調査(頭数センサス)によれば、公園内に生息する鹿の総数は約1,300頭〜1,400頭前後の高水準で推移しています。内訳としては成鹿のメスが過半数を占め、オス、そして当年に生まれた子鹿が続きます。
春日大社の創建時、茨城県の鹿島神宮から武甕槌命(タケミカヅチノミコト)が白鹿に乗ってやってきたという伝説から、古くより「神使(神鹿)」として手厚く扱われてきました。現代においても、殺傷や虐待は文化財保護法違反となり、法的な処罰の対象となる厳格なルールが存在します。