「なぜここまで売られ続けなければならないのか」「経営陣は株主を軽視しているのではないか」――。日本製鉄 Yahoo!ファイナンス掲示板を開くと、画面を埋め尽くすのは保有者の切実な叫びと、空売り勢による冷ややかな煽り文句です。掲示板の書き込み数が東証全銘柄の中でも連日トップクラスを維持している背景には、かつてないほど不透明感を増したメガディールが存在します。
議論の中心にあるUSスチール買収の真相は、単なる企業買収の枠組みを完全に超え、日米の地政学リスクと大統領選以降の米国内政の対立に巻き込まれました。日本製鉄が提示した約2兆円規模という破格の買収提案に対し、全米鉄鋼労働組合(USW)の反発や対米外国投資委員会(CFIUS)の安全保障審査が幾度となく立ちはだかりました。公式記者会見において経営首脳陣は「買収による技術供与と巨額投資こそがUSスチールの雇用と米国の国益を守る」と一貫して強気の姿勢を崩していませんが、買収完了の度重なる延期と訴訟リスクは、市場が最も嫌う「不確実性」を長期化させる結果を招きました。
さらに個人投資家を焦燥させているのが、複合的な日本製鉄 株価 下落理由です。買収に伴う有利子負債の急増、格付け引き下げ懸念、さらには資金調達に伴う潜在的な株式価値の希薄化リスクが重くのしかかっています。加えて、不動産不況が長期化する中国の鉄鋼メーカーが、国内で余剰となった鉄鋼製品をアジア市場へ安値で大量輸出(デフレ輸出)しており、製鉄各社のマージンスプレッド(鋼材価格と主原料価格の差)を容赦なく圧迫しています。掲示板での議論の過熱は、華々しいグローバル再編への期待と、泥沼化する買収劇および市況低迷という冷酷な現実との激しい落差が生み出した必然の産物です。