私人逮捕が法律上正当と認められるためには、厳格な要件を満たす必要があります。単なる「怪しい」「犯行を目撃した気がする」といった主観的な疑いだけでは逮捕権を行使できません。
私人逮捕が適法となるための基本条件は以下の3点に集約されます。
・犯罪と犯人の明白性:犯罪行為が行われている、または行われた直後であることが客観的に明白であること
・逮捕の必要性:犯人が逃亡するおそれ、または証拠を隠滅するおそれがあること
・比例の原則:拘束に用いる実力行使が、逃走防止に必要な最小限度にとどまっていること
ここで特に注意しなければならないのが、軽微な犯罪に対する特例です。刑事訴訟法第217条の規定により、30万円以下の罰金、拘留、または科料に当たる罪(過失傷害罪、侮辱罪、軽犯罪法違反など)については、「犯人の住居・氏名が明らかでない場合」または「犯人が逃亡するおそれがある場合」に限り、私人逮捕が認められます。住所や身元が判明している相手に対し、軽微な違反を理由に無理やり身体拘束を行う行為は明白な違法となります。