鯖を美味しく焼き上げるための勝負は、フライパンに火をつける前の下準備で8割が決まります。特に青魚特有の生臭さの主因である「トリメチルアミン」は、魚肉内の水分や脂質が酸化・分解することで生成されます。この揮発性化合物をいかに調理前に除去できるかが、仕上がりの香りを大きく左右します。
まず押さえるべきは、スーパーの店頭で手に入る生鯖と塩鯖の焼き方の違いです。流通段階で塩水処理が施された塩鯖(主にノルウェー産などのタイセイヨウサバ)は、適度な塩分によってタンパク質が引き締まり保水性が高められていますが、ドリップとともに酸化した脂が表面に浮き出ています。対して生の国産真鯖は水分が多く、塩分が含まれていないため、そのまま焼くと身が崩れやすく水っぽさが残ります。
確実な効果を上げる鯖の臭み取り下処理の手順は以下の通りです。生鯖を扱う場合は、焼く15〜20分前に身と皮の両面へ重量の約1%の振り塩を施します。浸透圧の働きによって内部の余分な水分とともに臭み成分が表面へ浮き上がってきます。浮き出た水滴をキッチンペーパーで完全に吸い取ることで、臭気の約70%を物理的に排除できます。一方の塩鯖はすでに塩味が決まっているため、振り塩は行わず、酒を大さじ1程度振りかけて2〜3分置いたのち、表面のドリップと余分な脂をペーパーで丁寧に拭い取ることがベストな処置となります。