窓ガラスに外的な衝撃を一切与えていないにもかかわらず、網入りガラスが自然に割れる理由の根底にあるのは、ガラス内部で発生する局所的な熱膨張のアンバランスです。太陽光がガラスの中央部に当たるとその部分は急激に熱を帯びて膨張しようとしますが、サッシの枠に埋め込まれたガラスの端部(エッジ周辺)には直射日光が当たらず、冷たいまま収縮を保ちます。この結果、膨らもうとする中央部とそれを押し留めようとする端部との間に強力な「引張応力」が働き、ガラスが耐えきれなくなった瞬間にパキリと亀裂が入るのです。
日本板硝子などの建材メーカーや、1966年創業のサッシ老舗「窓一番」など現場を知り尽くす専門業者が口を揃えるのは、「網入りガラスは普通のフロート板ガラスに比べて、熱割れに対する許容応力が半分近くまで低下する」という構造的弱点です。ガラスを切断する際に端面に微細なマイクロクラック(目に見えない小傷)が残りやすい上、封入された鉄線自体が熱を吸収しやすく、ガラスと金属で熱膨張係数が異なるため、接合部から応力破壊が誘発されやすいのです。
さらに見逃せないのが、網入りガラスの結露と冷暖房による寒暖差の影響です。冬場に暖房の温風が直接窓ガラスに吹き付けたり、夏場に強烈な西日が照りつける中でエアコンの冷気が内側に当たったりすると、表面温度差が急激に40℃〜50℃以上に達し、一瞬で耐熱限界を突破します。内部結露を長年放置した結果、ガラスの端から水分が浸入してワイヤーが酸化・膨張する「錆割れ(サビ割れ)」を併発しているケースでは、わずかな日差しでもいとも容易に破壊に至ります。