指揮の第一歩は、技術的な図形を描くことではなく、演奏者に安心感を与える「立ち姿」と「脱力」から始まります。力んだ姿勢はそのまま演奏者の音を硬くさせ、テンポの揺らぎを引き起こす原因になります。
基本姿勢のポイントは、足を肩幅程度に開き、頭のてっぺんから糸で吊るされているような意識で背筋を自然に伸ばすことです。重心は両足均等、わずかに前寄りに置くと、演奏者に対して前向きなエネルギーが伝わります。両腕は、みぞおちから胸の高さで「大きなバランスボールをふんわり抱える」イメージで構えます。肩が上がって首がすくむ状態は厳禁です。
指揮棒(タクト)を持つ場合は、人差し指をシャフト(棒の軸)に沿わせ、親指と中指の腹で軽く挟み込む持ち方が基本動作の定石です。グリップ(持ち手部分)を手のひら全体で強く握りしめてしまうと手首の柔軟性が失われ、滑らかな打点を作れません。指揮棒を持たない合唱指揮(手振り)の場合も、指先をピンと伸ばしすぎず、卵を優しく包み込むような丸みを持たせることで、柔らかく豊かな響きを視覚化できます。
特に重要なのが「腕の脱力練習法」です。初心者指導で定評のある方法として、まず両肩を耳まで思い切り持ち上げて5秒キープし、一気にストンと脱力するストレッチがあります。さらに、腕を高い位置から自由落下させ、みぞおちの高さにある「透明な机」で自然にバウンドする感覚を繰り返すことで、腕の重みを利用した美しい打点が生み出せるようになります。