本作の真相は、何重にも張り巡らされたミスディレクションによって巧妙に隠蔽されています。事件を正しく理解するためには、田治見家を中心とする血縁関係の構造を把握することが不可欠です。
物語の核心となる家系図の要点は以下の通りです:
- 田治見要蔵:狂気の当主。辰弥の母・鶴子を力ずくで手籠めにしたと信じられていたが、実際には辰弥の実父ではない。
- 寺田辰弥の実父:鶴子が真に愛していた小学校教師の亀井陽一。亀井はかつて村を訪れた旅人であり、落ち武者の末裔でもあった。
- 森美也子:田治見家の親戚である里村慎太郎の未亡人。一見すると辰弥の味方であり、村の因習から彼を救おうとする庇護者として振る舞う。
数々の惨劇を引き起こした真犯人は森美也子です。美也子は八つ墓村に伝わる「落ち武者の祟り」を隠れ蓑にし、田治見家の正統な後継者たち(久弥、春代、梅幸和尚など)を次々と毒殺。自らの愛人である慎太郎、あるいは辰弥に家督を継がせ、その莫大な財産を実質的に手中に収めようと画策していました。
美也子の凶行は、祟りという迷信を利用した冷徹な遺産強奪計画であり、鍾乳洞の奥底で辰弥を追い詰める彼女の狂気は、古き因習よりも人間の際限のない物欲こそが真の恐怖であることを物語っています。