権利上の複雑さを抱えながらも、なぜこれほどまでに多くのファンが『歳末特別警戒スペシャル』の配信を求め続けるのでしょうか。その答えは、日本テレビドラマ史に刻まれた圧倒的なキャスト陣の演技と脚本の密度にあります。
本作の主軸となるのは、湾岸署管内で発生した連続強盗殺人事件。その犯人・鏡久美郎を演じたのが稲垣吾郎でした。当時、国民的アイドルグループの第一線にいながら、表情を一切崩さず青島俊作(織田裕二)を冷徹に見下ろす「サイコパス的な知能犯」を見事に体現。後年のインタビューでも語られている通り、鏡役のオファーに対して稲垣自身が「自分の中に眠る冷徹な部分を引き出された」と述懐するほどの怪演を見せ、作品にただならぬ緊張感をもたらしました。
さらに見逃せないのが、後に『踊る』ファミリーの重要人物となる篠原夏美を演じた内田有紀の初登場です。警察学校を卒業したばかりの新人巡査として交通課に配属され、青島に憧れながらも事件現場の過酷さに直面する瑞々しい演技は、本作の大きな見どころです。内田の好演は翌1998年のスピンオフ『湾岸署婦警物語 初夏の交通安全スペシャル』の主演へと直結し、のちの映画『THE MOVIE 3』での本格合流へと結実していきます。
当時エキストラ同然の端役として登場していた仲間由紀恵や広末涼子、伊藤英明など、後に主役級へと駆け上がる原石たちが画面の隅々に配されていたことも、ファンの間で語り草となっています。署長の接待ゴルフ、恩田すみれ(深津絵里)と和久平八郎(いかりや長介)が繰り広げる年末特有の泥臭い生活感、そして青島と室井慎次(柳葉敏郎)が交わす無言の信頼――。エンタメ性と重厚な人間描写が奇跡的なバランスで調和したからこそ、四半世紀を超えても人々の記憶に残り続けているのです。