一方で、SNSや知恵袋の相談欄で頻繁に見かけるのが、「過去問道場を5周以上回して正答率90%を超えていたのに、本番で落ちた」という悲痛な叫びです。試験分析のエキスパートや不合格者の受験記録を突き合わせると、ITパスポート過去問道場で落ちた人の共通点には、明確かつ共通した行動パターンと認知の歪みが存在します。
その筆頭が、認知心理学でいう「流暢性の錯覚(Fluency Illusion)」です。過去問を何周も繰り返していると、人間の脳は問題文の冒頭数行や図表の配置を見ただけで、無意識に「正解の選択肢の記号や位置」を思い出すようになります。本人は「内容を理解したから解けた」と錯覚しますが、実際にはただ単に「過去問の文面と答えのペア」を記号として脳内に記憶しているに過ぎません。
この罠に陥った受験者は、本番のCBT試験で問題文の言い回しが少し変えられたり、選択肢の並び順がシャッフルされたりした途端に思考停止へと追い込まれます。過去問道場を何周解くべきかという問いに対して、回数そのものを自己目的にしてしまう人ほど、この丸暗記の罠に嵌まる傾向が顕著です。重要なのは周回数ではなく、「なぜその選択肢が正解で、他の3つはなぜ誤りなのか」を論理的に言語化できるかどうかなのです。