インターネット上の相談コミュニティやSNS上では、「愛猫の鼻がカサカサに乾いているが、重い病気ではないか」という切実な投稿が後を絶ちません。取材班が都内の動物医療センターに勤務する獣医師らに取材したところ、「乾燥イコール病気という短絡的な判断は誤解である」という一致した見解が得られました。
健康な猫であっても、鼻が完全に乾燥する生理的シチュエーションが存在します。代表的なのが「睡眠中および起床直後」です。睡眠時は副交感神経が優位になり、代謝や涙液・分泌液の産生が大幅に抑制されます。また、睡眠中は舌で鼻を舐める行動も行われないため、健康体であっても鼻鏡は温かく乾いた状態になります。覚醒して活動を始めれば、通常15〜30分程度で再び自然な湿り気が戻ります。
注意すべきは、起きて数時間経過しても鼻が乾燥したままであるケースです。ここで最も警戒すべき病態が猫の脱水症状による鼻の乾燥です。慢性腎臓病を患いやすい中高齢の猫や、糖尿病、あるいは下痢・嘔吐を起こしている猫は、体内の水分が枯渇し、細胞外液の減少がダイレクトに鼻鏡の乾きとして現れます。
家庭で簡易的に脱水を見分けるには、「スキンツルゴールテスト」が有効です。猫の背中や首の後ろの皮膚を指で軽くつまみ上げて放した際、正常であれば瞬時に元の形状に戻ります。しかし脱水状態にある場合、皮膚の弾力が失われ、テント状につまんだ形が数秒間残ります。鼻の乾燥に加え、歯茎がネバついている、眼球がわずかに落ち窪んでいるといった兆候が合致した場合は、一刻を争う輸液治療のサインです。