しこりに気づいた際、原因を切り分ける上で最大の分岐点となるのが「自発痛や圧痛(押したときの痛み)があるかどうか」、そして「硬さと可動性」です。一般の直感とは異なり、臨床においては「痛むものほど良性の炎症反応が多く、無痛で石のように硬いものほど悪性を疑う」という原則が存在します。
首の付け根のしこりを押すと痛い場合、その多くは免疫系が外敵と戦っているサインです。代表的なものがウイルスや細菌感染によって引き起こされる急性リンパ節炎です。風邪、咽頭炎、扁桃炎、虫歯や歯周病の悪化に伴い、首の付け根のリンパ節腫脹が急激に生じます。この場合、押すと強い痛みがあり、しこりの表面は比較的滑らかで、指で触るとクリクリと周囲の組織から独立して動く感覚があります。また、若い女性に比較的多く見られる「亜急性壊死性リンパ節炎(菊池病)」も、高熱とともに強い首の痛みを伴うリンパ節の腫れが特徴です。
一方、注意が必要なのが首の付け根のしこりで痛くない原因です。「痛みがないから軽症だろう」と放置されがちですが、医学的には無痛性のしこりこそ警戒レベルが一段上がります。痛みがないケースには、軟らかく指でつまめる良性の脂肪腫や、小さな開口部を持つ粉瘤も多く含まれます。しかし、「痛みが一切なく、触ると骨のように硬い」「周囲の組織に癒着して指で押しても全く動かない」「数週間から数ヶ月かけて徐々にサイズが拡大している」といった特徴が揃う場合、悪性リンパ腫や消化器系・呼吸器系がんの転移が疑われるため、速やかな精密検査が欠かせません。