肉料理の世界に根強くはびこる最大の迷信、それが「朝引きの新鮮な鶏肉だからレアでも安全」という言説です。断言しますが、鮮度と細菌汚染の有無には何ら相関関係がありません。
カンピロバクターは鶏の健康な消化管内に常在している菌であり、鶏がどれほど健康的で、屠殺から何時間しか経っていなかろうと関係なく保菌されています。むしろ、屠殺・解体直後の新鮮なレバーほど菌の活動性が高く、生残率が高いと警告する獣医学・食品衛生の専門家も存在するほどです。刺身用やたたき用として認可された牛肉等とは異なり、現行の日本の衛生基準において「生食用」として流通が許可されている鶏レバーは存在しません。
もうひとつの重大な盲点は、「炊飯器の保温機能」による代用です。「低温調理器がなくても炊飯器の保温ボタンで簡単に作れる」というレシピがネット上に出回っていますが、これは食品衛生の観点から極めてリスキーな行為と言わざるを得ません。炊飯器の保温機能は一般的に60℃〜75℃前後で推移しますが、サーモスタットの精度が粗く、庫内の場所によって激しい温度ムラが生じます。さらに、冷たい食材を投入した際に一時的に湯温が50℃前後に急降下し、そこから復帰するまでに長時間を要するため、カンピロバクターの至適増殖温度域(37℃〜42℃)に長時間食材が晒される「培養器」と化す危険性があるのです。