天津祝詞の真価を引き出すためには、音としてただ文字列をなぞるだけでなく、そこに込められた情景と意味を心で理解しておく姿勢が欠かせません。以下に、神社本庁などで広く用いられている標準的な禊祓詞(天津祝詞)の全文と、その現代語訳を明記します。
【禊祓詞(天津祝詞) 全文】 高天原(たかあまはらに) 神留坐す(かむづまります)
皇親(すめむつ) 我が祖の命以ちて(わがすめみまのみこともちて)
八百万の神等を(やおよろづのかみたちを) 神集へに集へ賜ひ(かむつどへにつどへたまひ)
神議りに議り賜ひて(かむはかりにはかりたまひて)
我が皇御孫の命は(わがすめみまのみことは) 豊葦原の水穂の国を(とよあしはらのみづほのくにを)
安国と平けく(やすくにとたいらけく) 知ろし食せと(しろしめせと) 事依さし奉りき(ことよさしさしまつりき)
此く依さし奉りし(かくよさしまつりし) 国内の(くぬちの) 荒ぶる神等をば(あらぶるかみたちをば)
神問はしに(かむとはしに) 問はし賜ひ(とはしたまひ) 神掃へに(かむはらへに) 掃へ賜ひて(はらへたまひて)
語問ひし(こととひし) 磐根樹根立(いはねきねたち) 草の片葉をも(くさのかきはをも) 語止めて(ことやめて)
天の斑駒の(あめのふちこまの) 馬の皮を(うまのかはを) 逆剥ぎに剥ぎて(さかはぎにはぎて)
天の八重雲を(あめのやへぐもを) 伊頭の千別きに(いづのちわきに) 千別きて(ちわきて)
天降し依さし奉りき(あまくだしよさしまつりき)
此く依さし奉りし(かくよさしまつりし) 四方の国中と(よものくになかと) 大倭日本国を(おほやまとのひのもとのくにを)
安国と定めて(やすくにとさだめて) 辞申し(ことまをし) 神定む(かむさだむ)
(※一般拝受の神拝詞において、伊邪那岐命の禊祓の段として広く唱えられる句)
掛けまくも畏き(かけまくもかしこき) 伊邪那岐の大神(いざなぎのおほかみ)
筑紫の日向の(つくしのひむかの) 橘の小門の(たちばなのヲどの) 阿波岐原に(あはぎはらに)
禊祓へ給ひし時に(みそぎはらへたまひしときに) 生り坐せる(なりませる) 祓戸の大神等(はらへどのおおかみたち)
諸々の禍事(もろもろのまがごと) 罪穢を(つみけがれを) 祓へ給へ清め給へと(はらへたまへきよめたまへと)
申す事の由を(まをすことのよしを) 聞こし食せと(きこしめせと)
恐み恐みも白す(かしこみかしこみまをす)
この詞の核心部は後半の「祓戸の大神等(瀬織津比売・速開都比売・気吹戸主・速佐須良比売)」に対する祈念です。「海原に流し、海底で呑み込み、根の国へ息吹で吹き放ち、完全に消滅させる」という四神の連係プレーにより、人間が知らず知らずのうちに抱え込んだ罪・穢れ・執着が跡形もなく清算されます。自力で何とかしようともがくのを手放し、大いなる神々の浄化システムに身を委ねる宣言こそが、天津祝詞の現代語訳が伝える真意です。