シャトーブリアンを調理する際、最も目指すべき理想の仕上がりは「レア」から「ミディアムレア」、フランス料理でいう「セニャン(saignant)」から「ロゼ(rosé)」の状態です。このとき、肉の内部ではタンパク質の変性が極めてデリケートに進行しています。
食肉の主成分であるミオシンは約50℃から変性を始め、旨味と食感を向上させます。一方で、肉を硬く縮こまらせるアクチンは約65.5℃で変性します。つまり、中心温度の目安を54℃〜56℃の範囲に収めることができれば、アクチンを変性させず、肉汁を抱え込んだまま最も柔らかい状態で口に運ぶことができます。厚みのあるシャトーブリアンをフライパンで焼く際の火入れ時間と休ませ時間の基準データをまとめました。
一般的な家庭料理では「フライパンの上に乗せている時間」ばかりが注目されますが、厚切りステーキの火入れにおいて熱の半分は「フライパンから降ろした後の余熱」で伝わります。この時間感覚を頭に叩き込むことが、名店級の仕上がりを手に入れる第一歩となります。