投扇興のゲーム構造は極めてシンプルです。「枕(まくら)」と呼ばれる桐箱の台座の上に、「蝶(ちょう)」と呼ばれる和紙と鉛の錘で作られたイチョウ型の的を立てます。そこへ向かって約1間離れた位置から開いた扇子を投げ、落ちた扇子・蝶・枕の3者の位置関係によって銘(役)が決定されます。
一見簡単そうに見えますが、投扇興における蝶・枕の落ち方判定は驚くほど精緻です。日本投扇興保存振興会の公式規定や関係者の話を総合すると、審判員(式司)は以下の要素を複合的に目視確認し、瞬時に役を判定しています。
- 接触の有無:扇子が蝶や枕に触れているか、それとも完全に離れているか。
- 扇子の表裏:扇子の要(かなめ)や親骨が上を向いているか、裏返っているか。
- 蝶の姿勢:蝶が立っているか、倒れているか、あるいは枕や扇子に寄りかかっているか。
- 空間的な位置関係:枕の上に乗っているのか、畳の上に転落したのか、枕と扇子の間に挟まっているのか。
例えば、蝶だけが畳の上に落ちて扇子が離れていれば「花散里(はなちるさと)」といった低得点(1点など)になります。しかし、投げた扇子が枕の上に美しく乗り、その上に蝶が倒れ込んでいるような複雑な幾何学配置が完成すると、一気に20点や30点といった高得点役へ跳ね上がります。
視覚的な理解を深めたい競技者の間では、イラストや写真で3次元の配置を網羅した投扇興の役一覧画像が重宝されています。また、地域の大会や体験会を主催する愛好家向けに、有志のWEBサイトや保存会から投扇興の点数表PDFダウンロードデータが配布されており、これらを印刷して手元に置きながら対局を進めるのが競技現場での定番スタイルとなっています。