工芸ブームに沸く一方で、教室の現場やSNS上では、予期せぬアクシデントに見舞われた愛好家の生々しい声が後を絶ちません。手軽な趣味として紹介される機会が増えたからこそ、現場で頻発している「リアルな失敗」に目を向ける必要があります。
第一の落とし穴は、漆の主成分「ウルシオール」によるアレルギー皮膚炎です。知恵袋やコミュニティフォーラムでは、「手袋をしていたのに手首と手袋の隙間から漆が付着し、翌日に腕全体と首回りが激しくかぶれて眠れなかった」「乾いたと思って器を素手で触ったら内部が生乾きで、指先が水ぶくれになった」という悲痛な体験談が散見されます。漆かぶれ対策としては、必ず厚手のニトリル手袋を二重に着用し、長袖のアームカバーを隙間なく装着することが不可欠です。万が一肌に漆が付着した場合は、水で洗い流そうとするとかえって広がってしまうため、すぐにサラダ油やオリーブオイルなどの植物油をコットンに含ませて拭き取り、油分を石鹸で洗い流すのが正しい初期対応です。
第二の失敗は、「簡易金継ぎでマグカップを直したところ、熱いコーヒーを注いだ瞬間にツンとした接着剤臭が鼻を突き、怖くて飲めなくなった」という使用上のトラブルです。短時間で直せる手軽さから、金継ぎワークショップでも1回完結型(1〜2時間)の体験講座として簡易金継ぎが採用されるケースが多く見られます。しかし、講師から「これは観賞用であり、毎日の飲食には適さない」という説明が不十分なまま受講者が持ち帰り、自宅で実用して健康被害の不安を抱えるケースが近年問題視されています。
本格的に器を直して使い続けたいと願う受講生の間では、月1〜2回のペースで数ヶ月かけて本漆をじっくり学ぶ継続型のワークショップが改めて選ばれています。自らの手で時間をかけて漆の硬化を待つプロセスそのものが、せわしない日常から離れる贅沢な時間として評価されている実態が取材から浮かび上がっています。