当て布の効果を最大限に引き出す実践の場が、ビジネスパーソンの身だしなみを左右するスーツスラックスアイロンがけである。膝裏の座りジワを取り除き、センタープレス(折り目)をシャープに際立たせるための正しい手順を解説する。
まず前提として、スラックスを平らなアイロン台に置き、内側の縫い目(内股)と外側の縫い目をきっちりと重ね合わせる。ここでズレがあると、二重線がついてしまい見栄えが著しく悪化する。
位置が決まったら、折り目の上から薄手の綿手ぬぐい、または専用の当て布を均一に広げる。正しいスチームアイロン使い方の要点は、「アイロンを横にゴシゴシ擦らない」ことだ。布の上からアイロンを垂直に降ろし、体重を軽く乗せて「3秒間プレス」したら、一度アイロンを持ち上げて次の位置へ移動するスタンプ方式を徹底する。
このとき、スチームの水分と熱によってウール繊維が可塑化(形を変えやすい状態)する。折り目をしっかり固定する裏ワザは、「アイロンを離した直後、当て布をすぐ剥がさずに上から手のひらで軽く押さえ、熱が冷めるまで数秒待つ」ことだ。繊維は熱が引いて乾燥する瞬間にその形状を記憶するため、このわずかな冷却時間を置くだけで、クリーニング店帰りのような強固で美しい折り目がキープされる。