赤坂見附駅からほど近い繁華街の真ん中、周囲を近代的なビルに囲まれた一角に突如現れる黒板塀の木造建築。東京リトルハウスの歴史は、第二次世界大戦で焼け野原となった東京が復興へと歩み始めた1948年(昭和23年)に始まります。
当時、一帯はまだ住宅地であり、ある一家が生活の拠点としてこの小さな家を建てました。しかし昭和から平成へと移り変わるなかで、赤坂は日本有数の歓楽街・ビジネス街へと急速に姿を変えます。特に1980年代後半のバブル経済期には、周辺一帯に凄まじい地上げとビル建設の嵐が吹き荒れました。
多くの個人住宅が立ち退きを選び超高層ビルや雑居ビルへと姿を変えていくなか、この赤坂の木造家屋が歴史的背景を背負いながら生き残れたのは、家主一家の「家族の思い出が詰まった生家を守り続けたい」という強固な意志があったからに他なりません。
やがて建主が亡くなり、長らく空き家となっていたこの建物をどう残していくかという課題に直面したのが2010年代半ばのことです。ここで動き出したのが建主の孫たちと、東京の都市史に魅せられたアメリカ出身の歴史研究者・編集者たちでした。単に商業的なビルへ建て替えるのではなく、「東京が歩んできた激動の70年を体感できる生きたアーカイブにしよう」という想いから、リノベーションプロジェクトが始動。これが、いま多くの人々を魅了する東京リトルハウスの誕生秘話です。