境内へ一歩足を踏み入れると、鎌倉市指定天然記念物の巨木や手入れの行き届いた苔庭が広がり、日常のノイズを遮断してくれます。境内の見学所要時間はゆっくり巡って30分〜45分程度。ハイキングコースの起点としても機能する広大な敷地内には、見逃せない文化財と意匠が点在しています。
まず参拝者を迎えるのが、鎌倉十井(じっすい)の一つに数えられる「甘露ノ井(かんろのい)」を抱く石橋と、すり減った鎌倉石が歴史を物語る石段です。その先に見えるのが、浄智寺の象徴ともいえる鐘楼門(山門)です。上層が鐘楼(鐘を吊るす場所)、下層が門という珍しい重層構造で、花頭窓(かとうまど)と呼ばれる優美な曲線を描く窓と、重厚な茅葺き屋根が独特のエキゾチシズムを醸し出しています。
本堂「曇華殿(どんげでん)」に安置されている本尊は、神奈川県指定重要文化財の木造三世仏坐像(阿弥陀如来・釈迦如来・弥勒如来)です。向かって左から「過去」「現在」「未来」の時空を司る三世仏が並び立つ姿は圧巻。宋風の影響を色濃く残す流麗な衣の文様や、衣の裾が台座から垂れ下がる「裳懸座(もかけざ)」の造形は、仏教美術ファンならずとも息をのむ美しさです。