平安京の遺産は、1200年以上の時を経た現在の京都市街地にも色濃く息づいています。京都を訪れた観光客が「初めてでも迷子になりにくい」と感じる最大の理由は、発達した通り名の組み合わせによる住所表記システムにあります。
京都の住所には、一般的な「〇丁目〇番地」ではなく、「四条通河原町東入」や「烏丸通御池上ル」といった表記が日常的に使われます。東西の通りと南北の通りが交わる地点を基準にし、そこから東西南北どちらに進むかを示す仕組みです。
- 上ル(あがる):北へ進む
- 下ル(さがる):南へ進む
- 東入(ひがしいる):東へ進む
- 西入(にしいる):西へ進む
この位置把握を誰でも簡単に暗記できるよう、京都では古くから「碁盤の目数え歌」が子供たちに歌い継がれてきました。東西の通り名を北から順に覚える「丸竹夷二押御池(まるたけえびすにおしおいけ)」や、南北の通り名を東から順に覚える「寺御幸麩屋富柳堺(てらごこふやとみやなぎさかい)」です。メロディに合わせて通り名を頭に入れておくだけで、どんな路地に迷い込んでも現在地と目的地の方角を正確に割り出せる知恵が、街の文化として根付いています。