医療現場の風景を劇的に変えたのは、各国の公的機関が相次いで改定した診療指針だ。世界保健機関(WHO)が感染リスク軽減に向けた包括的勧告を更新したことを皮切りに、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)も最新の科学的知見を反映したガイドラインを相次いで発表した。日本国内でも厚生労働省を中心に国内実情に即した議論が進められ、従来は慎重だった適応領域の拡大が一気に現実味を帯びている。
これまでの医療体制は、診断が確定した後に治療を開始する仕組みが基本であった。しかし最新ガイドラインの策定により、未病段階や暴露リスク発生直後からの介入が公式に推奨されるようになった。治療から予防へというこの価値観の転換は、個人の生活の質(QOL)向上はもちろん、膨れ上がる医療費の抑制という観点からも極めて大きな意味を持つ。