『仮面ライダービルド』のドラマを語る上で欠かせないのが、冤罪の元格闘家・万丈龍我(仮面ライダークローズ)との関係性です。東映公式資料や劇中の描写が示す通り、2人の関係は単なる「戦友」や「バディ」という言葉では括り切れない、魂の双生児とも呼ぶべき引力で結ばれていました。
最高IQを誇る理系の頭脳派である戦兎に対し、龍我は直感と本能で突き進む肉体派。第1話で運命的な出会いを果たした2人は、反発を繰り返しながらも互いの欠落を埋め合う関係へと成長していきます。劇中の公式設定において、ネビュラガス投与による戦闘力指標であるハザードレベルの推移にも2人の対比が克明に表れています。
物語開始前からビルドとして戦い続けていた戦兎は、第19話時点でのハザードレベルが「3.9」と着実な数値を記録していました。一方で、人間離れした潜在能力を秘めた龍我は急激な覚醒を遂げ、中盤以降は戦兎を凌駕する戦闘力を発揮する場面も増えていきます。龍我が自暴自棄になりかけたときは戦兎が理性のブレーキとなり、戦兎が自身の正体に絶望して立ち止まったときは龍我が熱い拳で前を向かせました。
精神分析的な見地から見ても、2人の関係は病的な共依存に陥ることなく、強固な「心理的バウンダリー(自他境界)」を保ちながら互いの存在意義を全肯定し合う理想的な相互補完の関係でした。「お前が作った偽物のヒーローが、俺を人間に戻してくれたんだ」という龍我の言葉は、自己否定に苦しむ戦兎にとって最大の救済となったのです。