通勤経路届の真の重要性は、通勤途上の事故や怪我に対する「労働者災害補償保険(労災保険)」の通勤災害認定において顕在化します。
労働者災害補償保険法第7条において、通勤とは「就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路及び方法により往復すること」と定められています。ここで法的に問われるのは「会社に提出した紙の経路とミリ単位で一致しているか」ではなく、「その移動が就業のための合理的経路であったか」という点です。
例えば、以下のようなケースでは、申請経路から一時的に外れていても合理的な経路の範囲内として労災が認められる可能性が高いとされています。
- 交通障害による迂回:いつもの電車が遅延・運休したため、別の私鉄やバスに乗り換えて通勤した。
- 自然な日常行為(ささいな行為):通勤経路の途中で駅の売店で新聞を買った、コンビニで昼食の弁当や飲料を購入した、公衆トイレを利用した。
- 法律で認められた「逸脱・中断の特例」:独身者が夕食を外食した、日用品を購入した、病院で診察を受けた、選挙で投票したなどの後、再び通勤経路に戻った後の移動。
一方で、「仕事帰りに友人と居酒屋で2時間飲酒した後の帰宅」「通勤路を大幅に外れて遠方のパチンコ店に立ち寄った後の移動」などは、通勤の「逸脱・中断」とみなされ、その後の移動で事故に遭っても労災保険の給付対象外となります。
なお、「天候や混雑の都合で申請とは別の安全な一般道を通っていた」という程度であれば、合理的な経路と認められ労災認定されるケースが一般的です。しかし、申請書類と事故現場の乖離が大きい場合、労働基準監督署や会社の調査に余計な時間と証明負担がかかることは避けられません。