この心理現象は個人間のトラブルにとどまらない。ビジネスやカルチャーの現場、特に出版業界やエンタメ市場においても顕著に表れる。例えば、集英社などの大手出版社からヒット作が生まれる一方で、作家や関係者のSNS上でのたった一つの発言が物議を醸すと、作品そのものや出版元への不買運動にまで発展することがある。著者の人格に対する反発が、丹精込めて作られた書籍にまで飛び火する典型例だ。
映像コンテンツの世界でも同様の現象が見られる。ドラマ「半沢直樹」で強烈な悪役を演じた俳優の迫真の演技があまりに強烈だったため、視聴者が実生活におけるその俳優のCM出演やバラエティ番組での姿にまで苦手意識を抱いてしまう事例があった。また、Netflixをはじめとする動画配信サービスで話題を集める愛憎劇でも、視聴者がキャラクターの特定の行動に反発し、作中の小道具やロケ地にまで批判の声を寄せる光景が散見される。フィクションと現実の境界を越えて嫌悪が拡大する様は、まさに現代版の袈裟嫌いと言える。