津山事件は多くの創作物の原点となりました。代表的なものが横溝正史の小説『八つ墓村』(映画化され、頭に懐中電灯を角のように差した田治見要蔵の姿が広く定着)や、事件を忠実に映像化した丑三つの村 映画(1983年公開、古尾谷雅人主演)です。
しかし、エンターテインメント作品で描かれる「発狂した狂人による無差別虐殺」という描写は、津山三十人殺し 真相とは決定的な乖離があります。
自決現場に残された都井睦雄 遺書全文および姉に宛てた手紙には、乱れのない理路整然とした筆致で自身の心境と津山事件 犯行理由が記されていました。
「うつべきをうたず、うたいでもよいものをうつた」(討つべき人間を討ち漏らし、討たなくてもよい者を討ってしまった)という悔恨の言葉は、本命の標的であった女性が逃走したことへの無念を表しています。また、「お前をいじめるようなことはしない。安心して勉強しなさい」と声をかけて見逃した少年や、病弱な睦雄に日頃から同情を寄せていた老人に対して「お前はええ奴じゃから撃たん」と告げて立ち去った事実など、冷徹なまでの判断力が最後まで維持されていました。