事件が起きたのは、初夏に行われた大手映画配給会社の設立記念パーティーの舞台裏だった。
多くの著名人が行き交うロビーの片隅。すれ違う瞬間、二人は足を止めた。時間にしてわずか10秒足らず。言葉は多くなかった。しかし、確かに視線を交わし、互いに小さく頷き合ったという。
「あれは単なる社交辞令の挨拶ではなかった」と、その場に居合わせたテレビ局関係者は興奮気味に語る。「二人の間には、長年連れ添った戦友にしか分からない独特の空気が流れていた。わだかまりが消えた瞬間を見た気がした」
この「10秒間の奇跡」の噂は、またたく間に業界内を駆け巡った。