『憧れの作家は人間じゃありませんでした』結末と真相ネタバレ解説

『憧れの作家は人間じゃありませんでした』結末と真相ネタバレ解説

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本作の魅力を牽引しているのは、単なる主従関係や恋愛関係には還元できない、登場人物たちの多層的で緊張感に満ちたキャラクター造形です。

瀬名あさひは、一見すると直情型で一生懸命な新米編集者ですが、その根底には「物語によって命を救われた」という強烈な原体験が存在します。作家の機嫌取りに終始するのではなく、作品のクオリティのために命懸けで作家と向き合う姿勢が、閉ざされていた禅の心を少しずつ揺さぶっていきます。

対する御崎禅は、数百年とも言われる気の遠くなるような年月を生き続けてきた人外の存在です。人間を捕食の対象あるいは脆く愚かな生き物と見下す一方で、人間が生み出す感情の揺らぎや言葉の美しさに病的なまでに執着し、小説を紡ぎ続けています。偏屈で毒舌、極度の人間嫌いでありながら、あさひの見せる無防備な誠実さに対して時折見せる戸惑いの表情が、読者の心を強く惹きつけます。

さらに、東陽出版の老獪な上司や、御崎禅の過去を知る文壇の重鎮、怪異の周辺を嗅ぎ回るフリーライターなど、脇を固める登場人物たちも物語の奥行きを深めています。互いに踏み込んではならない領域を意識しながらも惹かれ合う、二人の心理的バウンダリー(境界線)の攻防は、本作の最大の見どころと言えます。

中村 さくら
著者

中村 さくら

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。