名曲『赤い糸』の原点は、1990年代末期の大阪・堺東の商店街にまで遡ります。当時、ストリートミュージシャンとして活動していた小渕健太郎と黒田俊介が出会い、結成間もない時期に生み出された初期の至宝です。インディーズ時代のミニアルバム『Root of my mind』(2001年発売)に初収録された際、路上で足を止めた聴衆が次々と涙を流したというエピソードは、ファンの間でも伝説として語り継がれています。
当時のインタビューや音楽ドキュメンタリーにおいて、小渕健太郎は「誰にでも心の中にしまってある、忘れられない恋の記憶や後悔を、飾らない言葉で紡ぎたかった」と回顧しています。劇的なフィクションではなく、誰もが日常のなかで経験するすれ違い、若さゆえの不器用さ、そして時間だけが解決してくれる痛みを、一切の虚飾を排してスケッチした点にこの楽曲の原点があります。
2008年10月に16枚目のシングルとしてリカットされた背景には、同年に新垣結衣がカバーしたことで再び楽曲へ強烈なスポットライトが当たった事実がありました。約8年の歳月を経てセルフカバーとして再録音されたコブクロ版は、単なる懐古にとどまらず、成熟した表現者としての深みを宿したマスターピースへと昇華を遂げました。