インターネット上の育児ブログやQ&Aサイトでは、「日本の乳製品は法律で殺菌が義務付けられているから、国産ナチュラルチーズなら生で食べても絶対に安全」という言説が散見されます。しかし、食品衛生の専門的見地から見ると、この認識にはいくつかの落とし穴が存在します。
確かに、国内大手メーカーの工場で大量生産されるモッツァレラやカマンベールは、高度に自動化されたクリーンルームで製造され、定期的な菌検査をクリアしています。しかし、近年人気を集めている「小規模工房・牧場直営の手作りナチュラルチーズ」や「クラフトチーズ」の中には、伝統的な製法を重んじるあまり、大手工場ほどの厳密な陽圧空調設備や二次汚染防止体制が整っていないケースが否定できません。
また、原料乳をしっかり加熱殺菌していても、チーズの熟成庫の湿度環境や、カット・包装作業の工程で作業環境から菌が二次付着するリスクはゼロにはなりません。実際に海外の衛生管理先進国においても、加熱殺菌乳を用いたソフトチーズ工場で二次汚染によるリステリア菌の自主回収(リコール)が発生した事例が過去に報告されています。
さらに、チーズ以外にも潜む「リステリア予備軍」への認識不足も盲点です。いくらチーズを警戒していても、以下のような食品を生のまま摂取しては意味がありません。
- 生ハム、サラミ、プロシュート(非加熱食肉製品)
- スモークサーモン(冷燻製法で作られ、加熱処理されていないもの)
- パテ、レバーペースト、テリーヌ(チルド流通の食肉加工品)
- 未殺菌の搾りたて生乳、無殺菌乳で作られたアイスクリーム
「国産の大手製品だから盲信して生食する」のではなく、「妊娠期間中だけは、どのようなナチュラルチーズであっても加熱して食べることをマイルールにする」という姿勢こそが、最も確実かつストレスのない防衛策と言えます。