日本国内で木造建築物に甚大な被害をもたらすシロアリは、主に「ヤマトシロアリ」と「イエシロアリ」の2大勢力に分かれます。両者は生息地域や活動時期、さらには被害をもたらすスピードや規模が大きく異なるため、発生した時期と時間帯を把握するだけでも、相手の正体と危険度を正確に絞り込むことができます。
1. 北海道北部を除く全国に生息:ヤマトシロアリの発生生態
日本全国のほぼ全域に分布し、住宅被害の約8割を占めるのがヤマトシロアリです。その羽蟻が群飛(スウォーム)を行う時期は、4月中旬から5月下旬にかけての約1ヶ月間に集中します。とりわけ「前日に雨が降り、翌日に気温が急上昇した蒸し暑い日の午前10時から正午過ぎ(昼間)」にかけて、一斉に巣から飛び立つ習性を持ちます。
ヤマトシロアリの羽蟻は体長約5〜7mm(羽を含めて約8〜10mm)で、全身が黒褐色、前胸背板(首の後ろあたり)が淡い黄色を帯びているのが特徴です。乾燥に極めて弱いため、水分を多く含んだ床下の土台、浴室やトイレなどの水回り、雨漏り箇所の周辺に巣食います。加害速度は比較的緩やかですが、放置すれば確実に土台や大引をスポンジ状に喰い尽くし、建物の耐震性能を著しく低下させます。
2. 世界最強の破壊力:イエシロアリの猛威と光に集まる習性
神奈川県以西の太平洋沿岸部から南西諸島にかけて猛威を振るうのが、世界的に最も加害力が強いとされるイエシロアリです。近年の地球温暖化やヒートアイランド現象の影響により、生息北限ラインが徐々に北上している点も専門家の間で深刻視されています。群飛時期は6月上旬から7月中旬の梅雨期、気温が高く風のない「夕方から夜間(18時〜21時頃)」です。
イエシロアリの羽蟻は体長約7〜9mm、全体が黄褐色から赤褐色をしており、ヤマトシロアリよりも一回り大柄です。特筆すべきは強烈な「走光性(光に集まる習性)」を持つ点です。夜間、網戸にびっしりと張り付いたり、街灯やリビングの照明に向かって狂ったように群がる羽蟻は、イエシロアリである可能性が極めて濃厚です。イエシロアリは自ら水を運ぶ特殊な能力を持っているため、乾燥した2階の小屋組み、柱の最上部、天井裏にまで数百万匹規模の巨大なコロニーを形成し、わずか数年で建物を倒壊寸前にまで追い込む破壊力を誇ります。
3. 人畜無害な黒い羽蟻(クロアリ)の群飛時期
一方で、木材を食べない一般的なクロアリ(トビイロケアリ、サクラアリ、オオハリアリなど)の羽蟻は、主に6月から8月の真夏にかけての蒸し暑い午後や夕方に飛び立ちます。黒アリの羽蟻は交尾のために空中へ舞い上がりますが、住宅の構造材を食害することはありません。ただし、木材腐朽菌によってすでにボロボロに腐敗した木材の隙間や、壁内の断熱材を掘り抜いて営巣するケースはあるため、室内で大量に見かける場合は「壁内部の結露や雨漏り」という建物の構造的欠陥を知らせる警報装置として捉える必要があります。