笠松哲朗の名を決定的に押し上げたのが、大ヒットディズニーミュージカル『アラジン』でのタイトルロール(主演アラジン役)です。砂漠の街アグラバーを駆け巡る身軽なアクロバット、衛兵の手をすり抜けるダンスのキレ、そして名曲「自慢の息子」で見せた胸を打つエモーショナルな歌唱力は、四季ファンの間で伝説的な名演として語り継がれています。
彼のボーカルの特徴は、芯のあるクリアな中高音域と、言葉の一つひとつを客席の隅々まで明瞭に届ける劇団四季特有の「母音法」を完璧に咀嚼した発声にあります。単に技術的に巧いだけでなく、キャラクターの孤独や純粋さ、葛藤を歌声のグラデーションで表現できる点が、評論家や舞台関係者から極めて高い評価を得ています。
さらに、劇団四季のオリジナルミュージカル大作『バケモノの子』における一郎彦(青年期)役では、それまでの明るく爽快なヒーロー像から一転。心の闇とアイデンティティの崩壊に苦悩する難役を鬼気迫る怪演で演じ切り、俳優としての役幅の広さを決定づけました。『カモメに飛ぶことを教えた猫』のゾルバ役など、ファミリーミュージカルから海外メガミュージカルまで、あらゆる作風に対応できるユーティリティ性は劇団随一です。