周産期の現場や当事者の手記を検証すると、健診時の医師の「ちょっとした言い回し」がいかに妊婦の精神状態を揺さぶるかが浮き彫りになります。
大手SNSや質問サイトには、以下のような生々しい告白が数多く記録されています。
「妊娠12週の健診で、先生がプローブを動かしながら『うーん、赤ちゃんの向きが悪いのか鼻の骨がちょっと見えにくいね』とつぶやいた。その場では深く考えなかったけれど、帰宅して検索したら『鼻骨が見えない=ダウン症』と出てきて血の気が引いた。それからご飯も喉を通らない」(20代後半・初産婦の手記より)
「初期胎児ドックで鼻骨低形成の疑いと言われ、目の前が真っ暗になった。夫婦で泣きながら話し合い、確定診断のために羊水検査を受けた。結果が出るまでの3週間は地獄だったが、結果は染色体異常なし。生まれた娘は少し鼻が低めのパパ似で、元気にすくすく育っている。あの涙の日々は何だったのかと思う」(30代前半・経産婦の投稿より)
こうした実態から見えてくるのは、診察室における「情報伝達のギャップ」です。産科医側からすれば、「現時点では見えにくいが、向きのせいかもしれないし、数週間後には見えるようになることが多い」という日常的な観察所見を口にしたつもりであっても、受け手である親にとっては「胎児に重篤な異常がある宣告」のように響いてしまうのです。
また、超音波機器が2Dから3D、リアルタイムに動く4Dへと進化し、赤ちゃんのリアルな顔立ちが画面に映し出されるようになった現代特有の弊害もあります。4Dエコー写真の写り方(胎盤の位置、子宮壁への密着度、羊水量)によって、鼻が押しつぶされたように見えるのは物理現象として当たり前に起こります。しかし、視覚情報が鮮明であるがゆえに、「ネットで見たダウン症の赤ちゃんの顔立ちと似ているのではないか」という認知バイアスに囚われてしまう妊婦さんが後を絶ちません。