米津玄師が普段テレビの音楽番組に出演しない理由は、単なるメディア嫌いではありません。自身の楽曲が持つ世界観や音響バランス、映像演出のクオリティを極限までコントロールし、純粋な音楽体験としてリスナーへ届けたいという徹底したクリエイター気質に起因しています。生放送特有の制約や演出意図のズレを懸念し、地上波での生歌唱には極めて慎重なスタンスを一貫して取ってきました。
そんな彼が2018年の紅白歌合戦への出場を決断した最大の要因は、メガヒット曲「Lemon」に込められたパーソナルな祈りにありました。「Lemon」はドラマ『アンナチュラル』の主題歌として制作期間中に急逝した実の祖父へのレクイエムとして紡がれた楽曲です。NHK制作サイドからの熱心なオファーに対し、所属レコード会社と米津本人は当初辞退を考えていたものの、「祖父が生きて暮らした故郷・徳島から届ける形であれば、祖父への供養になるのではないか」という想いに至り、最終的に出演を受諾しました。
東京・渋谷のNHKホールではなく「徳島からの生中継」という条件をNHK側が快諾し、破格のスケールでバックアップ体制を整えたことが、世紀の生出演を実現させる決定打となりました。