2008年、日本中が涙を流した赤塚不二夫の告別式。そこでタモリが読んだ約8分間に及ぶ弔辞は、テレビ史に刻まれる圧倒的な名シーンとなった。まるで羊皮紙をめくるように真剣な眼差しで白紙の原稿用紙を眺め、淀みなく言葉を紡ぎ出す。しかし、式が終わり、祭壇前に置かれたその紙には文字が一切書かれていなかった。
これはまさに、源義経を守るために白紙の巻物を勧進帳に見立てて読み上げた武蔵坊弁慶の如きハッタリである。何もない場所に完璧な物語を立ち上げるこの行為は、単なる追悼の枠を超えた一種の真剣勝負だった。「私もあなたの作品の一つです」という結びの言葉に至るまで、即興でありながら計算し尽くされたかのような美しい言葉の構成力。観客だけでなく芸能界全体を驚愕させた真相は、彼の底知れぬ芸の深さを物語っている。