耳の閉塞感に耐えかねた患者が、無意識に実践して症状を劇的に悪化させてしまう代表格が「自己流の耳抜き(バルサルバ法)」です。
鼻をつまんで息を力任せに吹き込む耳抜きは、ダイビングや航空機内での気圧変化に対する一時的な調整法としては知られていますが、風邪をひいている最中に行うことは極めて危険です。鼻や咽頭にウイルス・細菌を多く含む鼻汁が存在する状態で強圧をかけると、汚染された粘液を自ら中耳内へ高圧ジェットのように送り込むことになります。これにより、軽度の耳管狭窄症であったものが、激甚な急性中耳炎へと即座に悪化するリスクを背負うことになります。
耳抜きができない時の対処法および自宅での正しい初期ケアは以下の通りです。
- 力任せな耳抜きは即座に中止する:唾液をゆっくり飲み込む(嚥下運動)、または温かい飲み物を少しずつ飲むことで、耳管口の自然な開閉を促す。
- 鼻の正しいかみ方を徹底する:両方の鼻の穴を同時に押さえて強くかむのは厳禁。片方ずつ小刻みに、優しく息を出すようにかむ。鼻をすする行為は中耳を陰圧にし、菌を引き込むため絶対に避ける。
- 鼻粘膜の保湿と加湿:蒸しタオルで鼻の周囲を温めたり、室内の湿度を50〜60%に保つことで、耳管周囲の血流を改善し粘膜の腫れを和らげる。
- 抗生物質による薬物治療の正しい理解:耳鼻咽喉科で処方される抗生物質は、中耳の細菌感染を鎮圧するための決定打となります。症状が少し良くなったからと自己判断で服用を中断すると、耐性菌を生み出し再発を繰り返す原因となります。指示された日数を必ず飲み切ることが鉄則です。