失踪事案の動態を年代別・社会的に掘り下げると、両極端な2つの世代で深刻な事態が進行しています。それが「10代の家出」と「高齢者の認知症失踪」です。
1. 10代の行方不明:SNSが加速させる「ネット潜伏型家出」
10代の失踪届出件数は年間1万人を超えています。昭和や平成初期の家出といえば、友人宅への宿泊や繁華街の徘徊が主でしたが、現在はスマートフォンのマッチングアプリやSNSのハッシュタグを介した「神待ち」行為へと完全に変貌を遂げました。
歌舞伎町の「トー横」に代表されるオーバードーズ(市販薬乱用)コミュニティや、SNS上で居場所を提供する見知らぬ成人の自宅へ転がり込む事例が後を絶ちません。家庭内のDV、教育虐待、あるいは学校でのいじめから逃れるための「防衛的失踪」である側面が強く、外部から見れば未成年者誘拐事案と紙一重の危険地帯に晒されながら、本人は自発的に潜伏し続けるという極めて救出が難しい構図を作っています。
2. 高齢者の失踪:介護現場の疲弊と「目撃されない徘徊」
年間約1万9,000件に達する認知症の行方不明者は、本人に「失踪している」という自覚が一切ありません。「昔住んでいた生家へ帰る」「職場に出勤する」といった過去の記憶に基づき目的を持って歩き出すため、足取りが速く、数時間で数キロメートルから数十キロメートル離れた隣接自治体まで移動してしまうケースが頻発します。
かつての地域社会に存在した「見守りの目」が希薄化した大都市近郊では、パジャマ姿や季節外れの軽装で歩く高齢者がいても誰も声をかけず、そのまま河川敷、用水路、あるいは雑木林へ迷い込み、発見されたときには手遅れになっている悲劇が繰り返されています。これは家族の介護力不足という個別家庭の責任ではなく、地域コミュニティが崩壊した日本社会全体の機能不全を示しています。