ネット上の言説やSNSの掲示板、一部のメディア言論において、「民主派は秩序を破壊した過激な暴徒だったのではないか」「経済発展を阻害した元凶だ」という論調が散見されます。しかし、一次資料や公判記録をつぶさに検証すると、構造的な事実誤認が浮かび上がります。
第一の誤解は、「予備選挙は政権転覆を狙った違法なテロ計画だった」というプロパガンダです。香港の基本法(ミニ憲法)第50条から52条には、立法会が予算案を否決した場合に行政長官が議会を解散でき、再選挙後も再び否決された場合には行政長官が辞任しなければならないという、制度化されたチェック・アンド・バランスの規定が存在していました。民主派はこの合法的条文を行使して普通選挙の実施を迫ろうとしたに過ぎず、武力クーデターを画策したわけではありません。既存の憲法規定の行使そのものが「国家安全を脅かす犯罪」へすり替えられたのが事実に即した見解です。
第二に、「民主派が排除されたことで香港のビジネス環境が安定した」という主張も現実のデータと乖離しています。香港域内総生産(GDP)の推移や外資系金融機関の動向を見ると、国家安全法の施行以降、多くの国際企業が地域統括機能をシンガポールや東京へ移転させました。司法の独立性と情報アクセスの自由という、金融センターとしての生命線が損なわれた結果、経済的プレミアムが失われつつあるのが現場の実態です。